集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定が間近に迫る中、7月1日午後2時、「わたしも、ぼくも、こんな閣議決定許せない!リレートーク大集会!」が、超党派の国会議員、市民の呼びかけによって開催された。会場となった参議院議員会館には、民主党、共産党、社会民主党の議員らが姿を見せた。また、呼びかけ人には、結いの党、生活の党の議員も含まれている。
リレートークと銘打たれた集会は、国会議員、市民団体の代表、労働組合関係者、宗教関係者、弁護士などがゲストスピーカーとして登壇したのに加え、聴衆の中からも発言者を募る形式で進行し、それぞれが熱弁を振るった。
呼びかけ人の一人である福島みずほ参議院議員は、「違憲のことを閣議決定することはできず、憲法上、無効です。違憲のことをやろうとするこの内閣を、どんなことがあっても許してはならない」と声を上げた。
閣議決定後、秋の臨時国会で集団的自衛権の行使を可能とする具体的な法律の整備がされる既定路線があるが、福島議員は、「それは違憲の立法」であり、「違憲の立法などはできないという運動を大きく作っていきましょう」と会場に呼びかけた。
- 記事目次
- 閣議決定は憲法違反
- 教育現場からの証言:戦争をする国への一歩は踏み出されている
- 自分の子供が「ゲームの駒」にされる国
- 山本太郎議員、「暴挙に反対する政治家を応援する有権者の行動が必要」
閣議決定は憲法違反
秋の臨時国会では、集団的自衛権の行使を可能にするため、「国家安全保障法」を含め、さまざまな個別法案が出されることになる。
民主党の神本美恵子参議院議員は、今回の閣議決定は明確な憲法違反に当たると、複数の実例を挙げて説明するとともに、違憲である以上は、臨時国会での戦いは、「これらの法案は認められない」ということに、「焦点化していかなければならない」と訴えた。
神本議員は、今回の閣議決定を、「戦争への道を開く集団的自衛権の行使について、主権者である国民に問うことなしに、一内閣の決定でこれを可能にしようとするもの」と指摘。「二度と政府の行為により戦争をしないことと、主権は国民にあること」が書かれている憲法の全文に照らして、明らかな違反だと断じた。
また憲法96条では、「国会議員の3分の2以上の賛成による発議と、国民投票での過半数の賛成をもって憲法改正が可能」と定められている。この手続きを踏まないで憲法と齟齬のある内容の閣議決定がなされることは、憲法違反に当たるとした。
さらに、「『憲法尊重擁護義務』が、内閣はもちろん、国会議員、公務員、裁判官にも課せられている」と、憲法99条にも言及し、安倍内閣による閣議決定は憲法尊重擁護義務にも背くものだとした。
教育現場からの証言:戦争をする国への一歩は踏み出されている
このリレートークでは、会場の聴衆も次々に登壇し、それぞれの立場から安倍政権のやり方に対する違和感、危惧、怒りなどを自身の言葉で表現した。
神奈川県で日の丸・君が代の強制問題や教科書問題に取り組んでいるという男性は、学校現場での「領土教育」に危機感があると語った。
「竹島のことを『韓国が不法占拠している』と教科書に書かれるようになっており、そう教えることが強要されている。今後、それ以外の考え方を教えることが許されなくなるのではないかと危惧している」。
管理が厳しさを増す学校現場と集団的自衛権の問題は同じであり、「このままでは、愛国少年少女が大量に生まれ出る」と男性は指摘する。
「『韓国、中国はひどい国』という排外主義的な意識を植えつけられる子供が大量に生み出されていく。教育現場を国家が統制する、というのは、戦争への一歩です。一つ一つ、指を折るように、最後は誰も声を上げられなくなってしまう」。
自分の子供が「ゲームの駒」にされる国
「こういう所で話すのは初めて」と登壇した、二児の母親である40代の女性は、安倍総理への不信感を露わにした。
「自分に男の子が二人いなければこの場所に来なかった」と胸の内を明かし、「安倍さんは、もともと期限を設けないで、ゆっくり議論すると言っていた。この人は嘘つきだ、と思う。今は、『戦争する国にはならない』と言っているが、それも嘘なのではないか」。
「安倍さん、石原さん、麻生さんはお金持ちですが、一生懸命働いて育てた庶民の子供のことを、ゲームの駒のように考えているのではないでしょうか。自分たちは絶対に戦場に行くことはないから、観念的に戦争のことを捉えている」。
仕事をしながら子育て中だという女性は、子供が兵士として取られるかもしれない国に税金を納めることになるのでは、と危惧しているという。
いい国だと思ってきた日本が、「こんな国になって」と皆が思うようになれば、日本の経済発展も難しくなるのではないかとの懸念を明かし、「前提に平和があるから、働くことができる」と語る女性の言葉に、会場から拍手があがった。
山本太郎議員、「暴挙に反対する政治家を応援する有権者の行動が必要」
リレートークが閉会になると思われた午後4時30分、突然、山本太郎参議院議員が会場に姿を現し、「皆さんの存在こそが光だ」と会場に呼びかけた。
「国会にブレーキがない状態。採決となると押し切られてしまう現実がある。これを止めるためには、市民運動が大きなうねりにならないといけない。市民の皆さんに甘えていると言われてしまいそうだが、現実はそうです」。
また、「自民党・公明党のやっている暴挙に対して党内部からも声が上がることや、行動で示してもらうこと」が必要と語り、「離党をして、新しい結集軸を作るという所にまで踏みこまなければならない」とした。
そのために必要なのは、有権者の行動だとし、「この暴挙に反対する政治家にエールを送る、みんなのためにやってくれる政治家を選ぶという空気を大きくしていくこと」だと訴えた。
■岩上安身によるインタビュー記事
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